- 困難は分割せよ
- ミス減らしは心理戦
- 二兎を追うなら戦略が必要
- 自己調節だの統合だの簡単に言うなって?
- トップスピードとは
- ミスが少なくなるリズムやスピード
- 安全な速度は日々変わる
- ノーミス優先?スピード優先?
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困難は分割せよ
中学受験の足音が近付いてきたとき、
「思考力は育ってきたが計算ミスがひどい。足を引っ張っている。小6の中学受験に向けてピシッとゼロミスにしたい。」
とお思いになる親御さんは多いです。
これ、みなさん、計算ミスをなくしても思考力を維持できると思いがちですよね。
確かに、物量作戦と加齢による自然な成長でそこそこ簡単にミスが消え、高い思考力に事務処理能力が追いついた!となるお子さんが、数から言えばほとんどです。*1
しかし、発達障害風味のある子を、何年も、脳特性や非認知能力、思考力などの
「得意な方に傾いていくクセ」
を活かして育成してきた上での
「ミスをなくそうプロジェクト」
は、少し様子が違います。
ミス減らしは心理戦
おばちゃん思うに、発達障害グレーゾーン児のための計算ミス対策は、主に心理戦です。物量作戦でもなく、時間が必ず解決してくれるとも言い切れません。
私見では、本人が得意にどれぐらい依存しているかによって、ミス減らしに必要な心理テクニックのレベルが、大きく変化するように思います。
たとえば思考力と事務処理能力にギャップがありすぎる場合。
自慢の思考力に、残念な事務処理能力を追いつかせたい、という発想になりやすいですが、その感覚のままだと、かえってうまく行かない可能性もあります。
サピックスやグノーブル、難関私立で算数を教えていらっしゃる方には常識となってますが、正答率3%の算数を解きまくるくせに、計算問題をザカザカ落とし、式、筆算が書けず*2足すと引くを間違い、2+3を6にし、単位を間違える子は、たぶんみなさんが思っているより多く存在します。
α1-2にも算数オリンピックメダリストにも数学オリンピックメダリストにもいます。
彼らの計算ミスをなくさせるにあたってのイメージはね、そうですね…。
前衛アーティストの学生〜大御所を想像してみて…その方々を、センスのいい税務署下っ端職員〜国税庁長官に仕上げる…。これレベルのギャップを、人工的に埋めるかんじ?(例えが下手なのすごく自覚してる…ごめんね…)
ある程度のところで小さくまとめ、生活を安定させてから、余力を使って前衛アートを嗜むぐらいでもいいんじゃないかなって。
「どっちにしろ絵空事」と思われましたか?
無理ではないです。ハマれば不可能ではないどころか、小6の秋冬目処に適切な捲りをかけると、なんだかんだととのったという形に持ち込めます
*3
後々のためにぜひ親子で取り組んで
「工夫してたら、なんだかんだマシになったかも」
という実績を作って、心の支えにできたらいいなと思います。
二兎を追うなら戦略が必要
モヒカン刈り(?)の前衛アーティストを、ハイセンスな税務署員にするからには、それなりに緻密で面倒な手順を踏む必要があります。
小6算数や国語の極みのあたりは、なんていうんだろ、アートの領域?おばちゃんは思ってます。聞くところによると東大理III数学京大理系数学など大学受験のごくごく一部の数学にも、アート成分はあるらしい*4
アーティストとしての感性と、税務署職員としての事務処理能力を、ひとりの子供の中で併存させるプロジェクト。んなもん、シンプルなはずがあろうか。
前衛アート大御所レベルを保持しながらあっさり国税庁長官レベル?の事務処理能力にまでととのうこともあるにはあるけど、おたくのお子さんがそうなる可能性はたぶんそんなに高くない。*5
じゃあどうするか。
そんなときこそ、困難は分割すべし、です。
難問(本人比、あるいは処理が面倒なものを含む)の解法を覚えたり解法の導き方を考えたりする勉強と、計算ミス対策は、まずは分けて行います。
その後、自己調節機能をインストールして、統合していきます。
この統合が肝要だとおばちゃんは思ってます。
自己調節だの統合だの簡単に言うなって?
そうですねー簡単ではないですわね。でも、それなりのやり方は、ありますよ。お子さんに効くかは、また別の話ですけども。
とっちらかり系ならば
・トップスピード依存はあるか、あるならどの程度か
・難問(本人比、あるいは処理が面倒なものを含む)に対して計算スピードアクセルベタ踏みだとやらかすメカニズムを知ってるか
・6割取れればいい過去問なのに、無意識に全問解くつもりで時間配分しちゃって焦ってないか。※中学受験に向けた最終段階では、捨て問設定による時間配分方法を取り入れるのが一般的
こういった質問を重ね、別途行う計算ミス対策を、演習やテストに落とし込むための手がかりを探ります。
トップスピードとは
「トップスピード依存を緩和せよ」
とっちらかりっ子は比較的スピード狂が多いようです。
シンプルな計算問題を最高速度で解く練習が、中学受験算数及ぼす影響を知って頂きます。親御さんにもお子さんにもね。
どれがメリットでデメリットなのかはまさしく表裏一体で、一概に言えませんが、
・手の動きと処理速度が一定まで上がる(思考や俯瞰が置いてけぼりになる)
・「このスピード感で解けるはず」という感覚をもたらす(計算に専念できない問題では、無謀なスピードを出してミスし散らかす)
・中学受験算数ならではの思考力、俯瞰力の壁にぶちあたったとき、いったん大きな後退をもたらす(克服したくなる劣等感やヒリヒリ感や、親御さんの夜叉モードを引き出す)
様々な影響があり得ます。
シンプルな問題でトップスピードを体感し、それを
「自分の最大パフォーマンス。ここまでスピード出して大丈夫」
と認識したら、どうなるでしょうか。うちの子の場合はどうだろうと考えながら読んでいただければと思います。
中学受験算数で、お子さんにとって背伸びの必要な難度の問題のみを通して、劇的に計算ミスを減らせるケースって、言うほどない気がします。
加齢に伴う自然な成長もあるので、問題解くてるだけでミス減るもんだと思われてますけど、それはわからん。だって発達障害風味だもの。みつを。
ミスが少なくなるリズムやスピード
その子の発達段階によって、最適な処理スピード、計算スピードがあります。
状況によっても最適なスピードは変わります。
どういうことかって?
自転車乗れるようになる頃を想像してください。その頃って、のろのろ運転も超高速運転も危険ですよね。
安全に走れる速度のレンジは、だんだん拡がっていきますよね。
そして、景色もちら見しつつ楽しむサイクリングと、事故にだけ気をつけてガーっと目的地に急ぐ疾走をこぎわけられるようになります。
また、速すぎても遅すぎても、より高度な注意力が必要になります。
計算スピードも、あんなかんじで
「今の実力に合った、出せるスピードの範囲」
があります。
さらに
「今日の自分のコンディションで、安全に行けるスピードの範囲」
というのがありますよね。それをトップスピードとしましょう。
トップスピードは、路面状況や混雑状況などによって調節しなくてはならないのです。
スピードを出しすぎると、入試問題全体を俯瞰したり、設問全体を俯瞰したりするだけの…脳のCPUって言うんですかね。ハードとソフトとを動かすだけの脳リソース、キャパみたいなものを、確保できなくなります。(あ、確保できる子ももちろんいます。負荷をかければかけるほどエネルギーが湧いてくる子とかね。強敵現れてオラわくわくすっぞ 等とおっしゃったドラゴンボールの孫悟空さんみたいな子ね。)
引き続きとっちらかりタイプを例に参りますよ。
中途半端に集中することにより、手と目、思考速度いずれかがいずれかを置いてけぼりにしてしまうことがあります。
・思考速度が目と手のトップスピードを超えた粋に到達してしまって、かえって不具合(読めない字、計算ミス)
・手や目の動きが思考や感覚処理のトップスピードを超えてしまって不具合
いずれも、とっちらかり系あるあるミスです。
余談ですが、しばしば
「集中できない。なので集中させたい」
「緊張のせいでテストでうまくいかない。なので緊張をほぐしたい」
と思われている親子さんがいらっしゃいます。その中には、いわゆる集中やリラックスの逆を補ってうまく行ったケースがあります。
集中力は、ありゃいいってもんじゃないです。ありすぎて散漫になったりオーバーヒートしたりしていることもあります。
おうちで音楽かけたり、貧乏ゆすりしたり、歌ったり、ガム噛んだり、親御さんに煽られたりして、敢えて過剰な集中を散らすことで取り組めていると見られるケースもあります。
緊張も、お子さんの受け取り方を調整すれば、緊張感としてプラスに働きます。いやそんなん無理やろと思われるかもしれません。確かに総数は多くないでしょう。しかし、なにせ「スタンダードが効かない、変わった子」ですから。がっつり圧をかけて緊張させ、それでもなんだかんだどうにかなったという経験を何度も思い出させる手法で、緊張を味方につける子もいるのです。
刺激が多く気の散りやすい、いわゆる劣悪な学習環境や、ドキドキするぐらい初見だらけの環境のほうが、高いパフォーマンスを発揮する子もいます。
一般には、場慣れ会場慣れ、過去問慣れが大事と言いますが、慣れてしまうことで、覚醒に必要な刺激が足りなくなり、思考がスピードオーバーになりミスが誘発されるっぽい子もいます。皆さん、安心安全大好きですが、究極にイレギュラーな状態でテストを受けると、かえって実力以上を発揮することもあるんです。彼らにしてみたら、慣れていない環境や問題というのは
「新鮮な気持ち」
をもたらしてくれる順境となるようです。
万全を期した第一志望第二志望と安全校をゴッソリ落とし、一発勝負のチャレンジ校を仕留めてくる的なことってあるんです。
「(その子にとっての)本番だけバチッと歯車噛み合いそう」
などと塾の先生に言われたら、お子さんはこのタイプと見られているということかもしれませんね。
安全な速度は日々変わる
繰り返しますが、自分のアップデートが自然になされる子ならば、放置でも良いです。(っていうか、そういう子は、外部環境の影響を受けやすく、良くも悪くも親の影響を受けにくいのよね。)
自己アップデートが極端に苦手な子ですと、親御さんの力が役立ちます。同時に、
「最適で安全な処理スピード」
を早い段階(例えば低学年)で身につけてしまうことで、高学年になっても同じリズム、スピードを保持してしまい、通用しなくなる性格である可能性も懸念すべきでしょう。
ノーミス優先?スピード優先?
ミス減らしスキルは、いつ身に付けさせるべきなのでしょうか。決してシンプルな話ではありません。
スピード優先でミスに目をつぶりがちなとっちらかりっ子をのびのびさせておくと、お雑すぎて目もあてられないという日が来ます。
これは悲劇でしょうか。
いいえ。親御さんとお子さんの心の距離が近いうちに
「このままではアカンな」
と気付けるのは中学受験の大きなメリットの一つです。
*7
計算ミスの根っこは様々ですが、高学年のミスは、デスクワークで強まった脳の偏りによるものも多いと思います。知能の偏りを緩和するには、伸ばすより補うという感覚がフィットする気がします。(筋肉、血流、脳に振動、海馬や大脳ばかりでなく小脳や本能に刺激与える、2Dに馴染みすぎた目を3D対応可能なように寄せる)え、医学的根拠?ごめんわからん。
続きます。次回は、公文やそろばん組がなぜしくじるのかを踏まえた話です。
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*1:※ちなみに、発達障害界隈では、凸の劣化も成長に寄与します。ついでに注意喚起いたしますと、ミス減らし対策は一般的には早いほうがいいとも言えるのですが、安全性確実性にこだわるタイプの子の中には、早期にマイ制限速度を固定するという弊害が表れることもあります。
*2:ちなみに、計算力が大人以上にあるけど転記ミスする子たちの場合は、最終的に筆算を最小限にすることで難関大学受験にも適応するので、ただ筆算書け式書けと押し付けても反発されるだけです。受験ガチ勢に言わせれば、筆算は頭悪い子向け。かえってミス増えます。要注意
*3:苦手なこと全般、小6の秋冬と言われるのうんざりですよね〜ごめんなさいね。結局、「ととのう」ためには、プレッシャーと必要性実感とか危機感とか、四の五の言ってられない状況が重要なんだろうな、だから月齢に関わらず圧のかかる時期が臨界期になりやすいんだよね。もちろん全体の3割ぐらいは不感圧症、危機感ゼロ症候群なんだけど
*4:サピックスやグノーブル、希、浜などが作る最高難度の算数適性との相関がある模様。今は大学受験塾が対策してて、アートの領域もほぼ言語化されてるみたいだけど。そういや、SAPIXのA はArtのAだね
*5:アートの領域で無双してる子を見て、羨ましいとか誇らしいとか思うかもしれないけど、頭蓋骨大きすぎだったり、起きられなかったりナルコレプシー出たり、ひどい偏頭痛になったり、生きづらかったり、ゴミをゴミ箱に捨てられなかったり、激烈な偏食やこだわりなど、いろいろ大変なこともありがち。脳開発は悪いことじゃないんだけど、偏りが偏りを呼ぶ状態ならば慎重に。その子のその段階でどこまで詰めていいか、模索して、ある程度、安全管理上の制限かけるべきかもしれないよ。ミス減らしスキルをインストールしながらうまく詰めれば、闇雲に詰めるよりは収まりがいいけど、そんなこたぁ塾も入試作問者も本人も知ったこっちゃない。その上ご家庭で「本人の熱望校に絶対合格させてあげなくては」とガチ詰め込みした日には、脳疲労で脳の寿命縮むんちゃうか。あるいは、生きるために必要なブレーキが効かなくなるか。M.Y.さんって海外有名大学卒の有名な女性弁護士さん…見てて心配よ…レズビアンかポリアモリーに転向すればいったん元気出ると思うけど…まぁなんていうか。伸ばせば伸ばすだけ伸びて安定する素材もあるけど、無理に一気に伸ばすとのちのち千切れる素材もあると思う
*6:学校の宿題の計算ドリルは中学受験生家庭にとってうざいもの。歴史的事実です。しかし、実はとても良い練習になります。トップスピードで定規で線を引きながらしょぼい筆算するなんて非効率で理不尽の極みに思えてしまいますよね。中学受験沼にいるとその有用性に気付きにくいのですが、だからこそ重要です。実は「つまらんことをチャッチャとこなして、時間を作る」ためのトレーニングとして最高です。活用すべきよ。あんなものをノルマとして課して圧をかけてくれるなんて、小学校素晴らしいよ…。もちろん、程度によるけどね…
*7:通塾などお勉強開始早期に、正しさにこだわる/こだわらせた場合、スピード控えめな状態を好み依存しやすいです。そのまま安定期を長く過ごすと、スピードが必要になっても、スピード上げることに怯えることも。自分のベストなリズムやスピード感は、修整できないわけじゃないんですけど、 「このスピード感がベスト」 と確立したあとにものすごくスピードアップさせようとするならば、お子さんからしたらいきなりゴールポスト遠ざけられるぐらいのショック。 親御さんにもお子さんにも、それなりの覚悟と戦略があるとよいですね。事前に「年齢月齢、達成度や親の気分などに応じてゴールポスト変わります」とか宣言しておくのオススメ