(2022.12.15、2023.4.10改訂)アスペルガー症候群を含むASDの人は、先輩ASDに学ぶとよい、という話があります。
個人的には、
・本人の許容力
・先輩ASDのキャラ
このあたりによると思います。
先輩ASDを「よい」存在と思えるかどうか?にかかっています。
確かに、情報の取捨選択方法をマンツーマンで教わるメリットは大きいです。
こだわりのある子は、独学すると、
・情報過多になりすぎて混乱
・どストライク以外切り捨てる
・1ヶ所でも違和感がある本・人から学ばない(完璧なものからしか学べない)
などのくせがついてしまい、学びの間口が狭くなりがちです。
他者を参考にするかどうかが、全面的なフィット感を感じられるかどうかに依存してしまう傾向があるのです。
尊敬できる指導者からは、ものすごくよく学びます。
しかし、ひとたび
「こいつ、嫌な奴だな」
「価値ないな」
と思うと、その人からどんなに有意義な話をされても、無興味状態、全く聞く耳を持たなくなるのです。
完全無欠の素晴らしい人格者から常に学べる環境であれば、そのままでもいいかもしれません。
しかし、そんな環境にいられるわけがありません。
居たとしても、ごくごくわずかなスーパートップエリートだけでしょう。
百ゼロ思考の強い子、自閉気味でストライクゾーンの狭い子にとって、
「ダメな目上の人から学ぶこと」
「嫌いな反面教師から学ぶこと」
はナチュラルではとても難しいことです。
自力だけでは、40 50過ぎてもたどり着けないケース多いです。
でも、こだわりの強い子だからこそ、必ず身に付けなければなりません。
そうしないと、学びの機会が激減するだけでなく、将来自分自身の存在価値を見いだせなくなる日が来るからです。
では、嫌いなダメな人からでも学べるようにするには、どうしたらよいでしようか。
百ゼロ思考や自閉は、生まれつき固まってしまっているケースもあるかもしれませんが、
総数で言いますと、後天的なストレスによって百ゼロ傾向を強めているケースがほとんどです。
そう仮定し、ストレス調整をはかります。
学校でのストレス負荷を減らしてもらうべきでしょうか?
ケースバイケースです。担任やクラスメイトに負担をお願いするなどして学校でのストレス・負荷を減らすべきかどうかは、個別に、慎重に見ていかねばなりません。
基本的には、単に居合わせたに過ぎない担任やクラスメイトレベルの他者に、配慮を期待してはいけません。
人は基本的に忘れんぼうで無責任です。勝手なタイミングではしごを外すことが多すぎます。
当所では、学校や他者への期待はゼロベースで指導を行います。
多くの場合は持ち物準備等 家でのフォローに留めていただき、家では、学校内外トータルで負荷と幸福感を見極め、バランスをコントロールしていきます。
学校負荷の強い年は、親子関係を深めるチャンスです。親の介入で、幸福感受性を高めることがたやすいです。
学校負荷の弱い年は、家で負荷をかけて、能力向上させることに向いています。
いずれにしても、幸福感やユーモアは、ストレスを打ち消す力があります。
ですから、親も幸福感やユーモアを大切にしましょう。
一緒にたくさん笑いましょう。
そのためには、同じものを楽しむ時間を作りましょう。
シャワーやお風呂のあと
「あー気持ちよかった!」
など声に出して言うのもおすすめです。認知行動療法の一環としても理にかなっています。
一緒に笑うのって幸せなことです。笑えなくても、そばにいるだけで尊い時間です。
家族でいられて、私は幸せだなー
…もちろん辛いことがっかりなこともたくさんあるけれどそこばかり見ずに、根本に立ち返れば、とても幸せでいられる。
そんなふうに、親の幸福感を刷り込んでいくのも良いかもしれません。
親御さんご自身が、幸せだと思えないならば、まずご自身のストレス調整を行うとよいでしょう。
例えばですが、スポーツクラブ。運動音痴でも、行くだけで美男美女がほめまくってくれます。
万年運動嫌いでも、ジムでは運動します。
自己肯定感が上がります。
(とはいいつつ、私は契約して続けられる自信がないので契約してません!
子ども連れて公営プールに行きます、うちのあたりだとBMI35くらいなら劣等感も感じません)
こんなことも伝えます。
・幸福感のためには、人を傷付けない笑いがよい。
・笑えればなんでもいいという価値観の人たちには押し付けない。
これしっかり刷り込みましょう。でないと、いじめっ子軍団にひとり立ち向かい返り討ちに遭う蟷螂の斧くんになります。
いじめを止めるには、それなりの人望や組織力が必要です。
正義やルールを振りかざして疎ましがられがちなASDに
「いじめを見たら止めよう」
という指導ははっきり言って毒ですので、やめましょう。
遊び、美味しいものを分け与え、お互いの喜びになる範囲でだっこやハグをし撫で回し、一緒に寝て、
なおかつ、これらの行動は当たり前のことではなくて、お互いが好きだからするんだよと知らせ続けることで、お互いの幸福感の感受性を高めていきます。
さらに、
「思春期、恋愛対象の愛が欲しくなり、親なんてどうでもいいという日が来たら、かわいいかわいい大好き大好き伝える言動はなるべく我慢するけれど、親は死ぬまであなたのことが大好きで特別なんだよ~迷惑かもしれないけど。ごめんね」
ということも、刷り込むことをおすすめします。
親自身、自分が完全無欠ではないことをアピールしながら関わっていくことは、お子さんの
「ダメな先生からも学ぶシステム」
の構築に大変効果的です。
親自らの欠点をさらした上で、
完全無欠でない人からも学んでくれてるね、いいね!
反面教師からも学ぶと学習効率いいんだよ!
と繰り返し実感させていくのです。
時には
「いじめっ子からも学べたね!」
「悲しみが深すぎて感情もて余してる子からも学べたね!」
というような、非難めいた言い方や皮肉めいた言い方も必要です。
悪口ダメ!という綺麗事を押し付けることは簡単ですが、やめたほうがいいです。
必要悪だと割り切って試しに悪口使ってみたよ、どうかな伝わりやすかったかな、などと問いかけて触れさせてみるほうが、お子さんの
「ダメなものから学ぶ力」
を高める助けになります。グチも必要悪だと私は感じています。
ダメな人から学ぶ力(ダメな人を反面教師と見なしてそこから学ぶ力)は、発達支援では軽視されがちです。
確かに簡単ではないですが、反面教師を活かす受け取り方は、思春期以降のASDが健全に生きるキーポイントのひとつだと思います。
ダメな人にも価値がある、と認識できるので、
人を責め、自分を責める思考を手放し
「ゆるす、認める」
思考につながります。
人を責めることは良くないことだと思い込みすぎていて、責めたくなる自分を嫌悪してしまう…これは整合性を愛する思考力凸民あるあるです。そんな子が、界隈にはあまりにも多いのです。人を許すとき、自分は善行したとか、許されたという感覚がわいてきて、心の闇がパッと明るくなり、他者からもたらされるストレスもぐっと緩和されます。
お子さんが園児ぐらいのときから、親御さんは、親にとっての反面教師を見つけては、
「やったラッキー!ありがたいねぇ!」
ぐらいのリアクションを見せてみましょう。
お子さんが高学年になるころには、こなれてきます。
反面教師となってくれる他者の家族を憐れむぐらいの成長と、ほどよい達観ぶりを見せてくれるでしょう。