続きです。
☆叱らないだけじゃだめなんです
叱らない勉強指導方法は、学力向上という点ではとっても有効です。
ほんとに、叱りさえしなければ、
頷きながら横で微笑み続けてあげれば、
0点ゲッターと呼ばれた子も満点を取るようになるぐらいです (実話です)。
しかし、無視すべきでないデメリットが2つあります。
1 打たれ強さが育たないこと
2 叱られない=愛されていると思い込み、愛してくれる人への試し行為を繰り返すようになってしまうこと。
この2つのデメリット、従来型の療育ではほとんど言われていないのではないかと思われます。
ろくでもない他人にモヤモヤさせられたり、ボッコボコに傷つけられてたりしたときこそ、納得できる落としどころの設定の仕方を教えてくれる親とのやり取りが猛烈な効果を発揮します。
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療育は、価値観の介入ができませんので、綺麗事のインストールまでで終わります。
リアルなサバイバルスキルは身に付きません。
幼児期であれば、なるべく傷付かないように守り、敵を排除し、子の思いを代弁し弁護するという、親としての「頑張った感」に陶酔してもいいかなと思いますが、
小学校時代にまでそのスタンスで通してしまうと、高学年以降に無理が生じてきます。
打たれ強さや他者感情の受け取り方、つまり防御力、自衛力を軽視し、全面的に承認でくるんだまま学童期を終わらせる傾向が、「意識の高い 発達支援」に蔓延しています。
このことに、強い懸念を抱いています。
当方にご相談くださる親子さんには、決して忘れてほしくないファクターです。
打たれ強さも能力のうち、愛の受け取り方も幸福のうち。
世の中には怒鳴る人もいじわるな人もいる、という前提で育成しなければ、あっさり不登校になりあっさりニートになりあっさり引きこもり、繊細ならばあっさり親の苦言を受け止めきれずに自殺します。
これは、発達障害児に限った話ではありません。
体罰のある子育てばかりが批判されていますが、誉めてばかりで極力傷付けない子育てをされた不登校生徒、ニート、引きこもりの方々も、今後相当な数出てくると思います。
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発達障害の特性そのものは、悪性ではありません。
定型でも、発達でも、
感じ方の違う人と馴染む、時には妥協する方法を身に付けなくてはなりません。
自分を押し通しても受け入れられる、と思い込みバランスを取らないと、不具合が多発し、そのまま改善しなければ、忍耐強い親以外から相手にされなくなります。
「嫌われる」←→「嫌われることを恐れすぎる」←→「人を避ける」という現象に陥り、健全な人間関係に属せない状態が続くことは、
自己肯定感なんていう、後から押し付けられた曖昧な概念よりよっぽどメンタルの不具合に直結します。
深刻な障害、統合失調症や鬱病、人格障害と相関があるようです。
打たれ強さを身に付け損なうこと。
愛=なんでも許してくれる、と思い込み、試し行為という名の嫌がらせをしてしまうこと。
これらの破滅的なデメリットを、最小限にするためのtips2つのうち、今回は叱責から学ぶ機会の設定についてお伝えします。
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☆叱責から学ぶ力の必要性
勉強中の叱責は学習効果を阻害します。
おばちゃんもこれには異論なしです。
しかし
たとえ親が叱らなくても、もしかして…なお子さんは、多数派を中心とした行動矯正実績が多い歴史的手法「叱責」「圧力」という手法から逃れることはできません。
いつかどこかで誰かを激昂させてしまうはずなのです。
このことを想定して、戦略的に導いてほしいと思います。
予習しておきませんと、人生最大級に強く叱られたとき、お子さんはどうしたらいいかわからなくなります。
そのとき、予期せぬこと、例えば刃物を突き付けるとか、建物から飛び降りるなどしでかしかねないです。
叱らない子育てがうまくいっている間、親は、いいことしたつもりで居られます。
それはそれで意味があることです。
しかし、絶対に叱られないまま人生送らせてあげられるわけではありません。サバイバルテクニックも身に付けさせてあげなければなりません。
発達障害傾向に限らず、お子さんたちの一部は、差し迫った危機に遭遇して初めて生きることに興味を持ち、サバイバルスキルを習得する意欲が空から降りてきます。
そのようなタイプであれば、差し迫った危機、たとえば「ブチキレてる大きな人」の前でヒイイイィと縮み上がる経験を軽視してはなりません。
「怒りの炎に油を注がない」ための処世術を身に付けられなかった子の場合は、どうなるでしょう。
本人はまわりと同じようにしているつもりなのに、同級生や同僚に比べて、やたらめったら叱られる、という現象が続きます。
その不公平感から、叱責されるたびにパニックになります。
パニックの言動は叱ってくる人の怒りをさらに刺激してしまい、大騒ぎになります。
穏やかなときを愛する人からは、嫌われる、避けられる、孤立する、助けが得られない、といった不都合が連発する人生となりかねません。
凍り付いたように黙る、暴れる、泣く、わめく、悪態をつく、支離滅裂な人格否定の言葉で攻撃する等。
パニックのときのことを忘れがちな子であればなおさら、何で私だけ……また僕だけかよ…といった不快感が、強いストレスとなるでしょう。
これは、もしかして発達障害グレーゾーンの、あるある現象ですが、
発達風味があっても、悲観することはありません。
雷雲が発生したらゴルフをしない!というようなリスク回避を、感覚的にできればよいのです。
できないならば知識や体験として学んで、50回に1回でも実行できるようにすればいいのです。
人の怒りに火を注がなかったからハッピーが持続した、という経験をさせ、それにフォーカスするよう誘導します。
効果を感じさせ、あれはよかったね、賢明だったと思うよ、と何度でも振り返り、思い出させましょう。
効果を実感できると、なんとかの一つ覚えと呼ばれるほどに、「火に油を注がないための、知見」を活用します。
活用した効果を感じれば、どんどんはまります。いずれは、自己開発するようになるでしょう。
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自分だけでなく相手も要ケア!怒りのなだめ方
自分の怒りの鎮め方が大切だとよく言われていますね。
それも大切です。
同時に、「相手の怒りの鎮め方」というライフハックの技術もとても大切です。
ビジネス書にはよくあるのですが、子ども向けには、ほとんど言われていませんよね、相手の怒りの鎮め方。
相手の怒りの炎を鎮めるには、相手に冷や水をぶっかけるのではなく、
相手の怒りのピークが過ぎるまで神妙な顔をしたり謝ったり「よい行動」をしたりして、雷の直撃を避ける、ということが最適です。
怒りの雷を受けたふりして 直撃を避ける、雷雲が発生したらゴルフクラブから離れて地に伏せる(担任の機嫌が悪いときはお楽しみを我慢する)、といったサバイバルスキルが欠落したまま社会生活を続けると、不安と人間不信を強め、不安と不信によりさらに環境が悪化し、精神的社会的なダメージが加速度的に増大していきます。
この事態を防ぐため、叱責される練習と、叱責から学ぶために必要な、自分を落ち着かせる練習をする機会を設定します。
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☆耐えうる負荷の中で、自分を落ち着かせ、叱責から学ぶという練習機会
精神的負荷が適切にコントロールされている状態で、叱責から学ぶ経験をサポートしてあげるのです。
「精神的負荷が適切にコントロールされている状態」、つまり、耐えられるギリギリMAXレベルの負荷をかけるのが、肝です。
人の怒りの炎に油を注ぐ達人であるために、いつも、制御不能な山火事状態の怒りの前に呆然としたりパニックを起こしたりする習慣がついていることがあります。
これには、叱る側の精神面が重要です。
大規模な山火事状態にならないよう、本気にならないようにするのにはコツがいります。
「ぶっちゃけこいつがどうなろうと知ったこっちゃねえけどよ」ぐらいの心構えを持つとか、
叱責を始める前に心の中で
「ショートコント! 怒り!」
と言うとかして、ヒートし過ぎないようにするのが、お子さんのSST(ソーシャルスキルトレーニング)効率を上げることにつながります。
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叱責の落としどころを考えながら、叱る側自身が冷静に、今は訓練中である、と意識し続ける必要があるわけです。
すごく難しいことのようですが、やってみるとメリットが大で、お子さんの成長がみられるので、やりがいが出てきますよ!
叱る側が冷静でいるためにも、お子さんを勉強恐怖症にしないためにも、「勉強中の問題行動」を叱るのは、おすすめしません。
なぜだと思われますか?
勉強内容、学習効率、あるいは頭が悪くて叱られているのか、姿勢や態度が悪くて叱られているのか、お子さんに全く伝わっていないことが多すぎるからです。
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「姿勢が悪い」と叱ってしまったことのある親御さんは、お子さんに謝ってください。
親だって、いつもいつも姿勢を正している訳ではないでしょう?
姿勢をなぜ正さねばならないのか、お子さんが納得いく説明はできていないですよね?
見栄えが悪いとか、やる気がなさそうに見える、という、見る側の主観的な問題は、
お子さん本人には理解しにくいです。
他者の主観であるから理解しにくい、態度などの課題と、学習という客観的に重要な課題を、ごちゃまぜにして要求するせいで、
「くっそーえーい全部まとめてめんどくっせ オレシラネ勉強うっざ くそうっざ」となっているケースは本当に多いです。
学習は学習、態度は態度。
それぞれ別に指導してから、学習態度の改善に取り組みましょう。
学習習得も態度も途上状態のお子さんに対して、学習態度が悪い!と叱ることは、お子さんを勉強嫌いにしたい親御さんにすっごくおすすめです(すみませんイヤミです!)。
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☆経験を言語化する
叱責から学ぶ経験の言語化を手伝います。
「叱責からでも、学んで生かせばメリット大」というプログラムをお子さん本人の脳にインストールしていきます。
(詳細は過去記事にあります)
世の中は、「優しい世界を目指そう」「社会全体から、パワハラを無くそう」頑張ってはいます。
しかし、実現不能なファンタジーです。
興味のあることしかしない、もしかして、なお子さんにとって、「叱られない世界」は幻想なのです。
だからこそ、親との心の距離が近いうちに、叱責への対処法パターンをひとつひとつ教えてあげるのです。
「叱られないための予防方法」だけでは、決して心身を守れません。
「叱られたらどうするか、緊急時の対応方法」を合わせて教えてあげてください。
☆叱責から学ぶ力の付け方
色々あるとは思いますが、ここでは親御さんご自身も、経験があるような、古典的な方法を示します。
(身近な他人の姿やドラマを利用して、叱責を客観視する訓練もあります)
叱られる+ショックを受ける+冷静さを取り戻す+克服するという経験を繰り返しさせます。
そこでまずは資産と相談です。
一生、他の価値観と接点を持たずに暮らさせてあげられますか?
一生、叱られずに暮らさせてあげられますか?
それならば私共はお役に立てません。
そうでなければ、その子に使えるお金、20年でおいくらですか?
学費生活費以外に年50万~100万あるならば、苦手克服と、「叱責から学ぶ経験をさせる目的の」楽しい体験を、マンツーマンでバランスよくさせましょう。習い事をするとか体験を買うってことですね。
課金可能額が年50万円未満であれば、お金をかけすぎない、テレビマンガスマホなどを利用した方法を選びましょう。
本人が楽しいと思えることをしているときであれば、叱責のデメリットが出にくく、メリットが得やすいためです。
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☆「飴と鞭」のバランス
「叱るための楽しいこと」、これにはものすごく大きな個人差や費用の違いがあるので、詳細面談により個々に設定します。
本人の得意な、好ましい行動(音楽、絵画、造形、運動)について、高いレベルを目指させて強く叱り、レジリエンスを鍛えるのは、高い効果があると一般的には言われ「好きな習い事をさせる」というのが良いことだと皆さんおっしゃいます。
習い事や、学校の授業でも「上位の子を集中的に叱る」という手法は、多用されているようです。
しかし、芸術的な感性や学問的な興味は、割と簡単にしぼんでしまうことがあるので、その維持管理にはテクニックが必要です。
また、音楽が好きだからと厳しい先生に習わせて、親がコツコツ練習をさせる役割になってしまうと、子どものメンタルバランスに気を配る立場の人、フォロー役が居なくなります。
ハイリスクハイリターンです。
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どうでもよいけどひたすら楽しい1日体験を増やす
叱責から学ぶ経験を、気軽にお試し頂くのには、ローリスクミドルリターンなものがよいでしょう。
おすすめの活動の3条件として
「一生初心者で問題ないもの(嫌いになっても構わないもの)」
「それ自体が飴になるもの」
「マンツーマンに近いこと」
この3つがあげられます。
勉強や、身を助けるかもしれない唯一の特技について厳しく指導することで、嫌いにさせてしまうとかわいそうです。
ローリスクミドルリターン派は、勉強や唯一の特技を、叱責から学ぶプログラムの対象にすることは避けましょう。
また、本人がつまらないと思うことでも、いけません。
叱責のダメージが、遣り甲斐を超えてしまいます。
本人が楽しいと思えることを選ぶのが重要です。
指導は、1対1に近い状態で行います。親も本人も先生も、他者と比べずに済みますし、本人も自分自身の上達・成長を認識しやすいためです。
一生初心者で構わないジャンルで、それ自体が飴になること、マンツーマンに近いこと、この3条件に基づき、プランを設定します。
☆叱られて学ぶ機会の設定
さて、先程も示した通り、予算により、旅行先等でたまに楽しむようなことや、テレビスマホマンガなどを「叱られて学ぶ機会」として設定することが多いです。
体を動かすことの好きな子でしたら、ボディーボード、スタンドアップパドル、カヌー、カヤック、水上スキー、アスレチック、スカイダイビング、ニュースポーツ、車椅子競争、自転車好きな子ならサイクリング等「学校教育と関係の薄いスポーツ」がおすすめです。
その子にとって、快感という「飴」が得られやすいものを選びます。
行うこと自体で「飴」が得られる活動であれば、「鞭から学ぶ」という体験とのバランスがとりやすいからです。
前述したように、テレビマンガスマホも快感や達成感という「飴」が得られやすい活動と言えます。
ですから、テレビマンガスマホにおける作法、姿勢は「叱責から学ぶ経験」として使いやすいです。
☆親が誤学習させていませんか
勉強嫌いな子に対し、勉強のときは姿勢を正さなければ叱るけれども、テレビマンガスマホのときはゴロゴロリラックス姿勢を黙認している、
こんな家庭はありませんか?
それ、禁じ手です。
親が誤学習を誘発しています。(自戒を込めて…)
この方針では、姿勢の悪い子、筋力の弱い子を、筋力の弱い勉強嫌いにする方に誘導しているようなものです。
ゴロゴロが許される状態、つまりテレビマンガスマホ大好きが加速するのが自然の摂理です。
姿勢や、鉛筆の持ち方を直したいときは、先に筋力のバランスが整えたほうが、直しやすいのです。
勉強と筋トレを同時に行い同時にダメ出しする必要があるでしょうか?
いいえ、一切ありません。
テレビやネットを見させるときこそ、姿勢を正させ、鉛筆を持たせ、なんならノートを取らせることにすればよいのです。
テレビマンガスマホを見せるときは、条件として正しい姿勢を取らせます。映像端末やリモコン、マンガの持ち方、扱い方を徹底させます。
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☆変わった子のための変わったルール
「マンガを見る間は必ず机で、ずっと姿勢を正すこと。」「映像を見るときは鉛筆正しく握っておくこと。」
こんなルール、普通じゃないですね!
そう、普通じゃない子なので、育て方も、普通基準にこだわらず、その子にとって向いたものを採用すべきです。
苦手な腹筋背筋や握力等筋力のバランスを、好きでもない勉強と同時に鍛えるのは苦行です。苦手×苦手=無理、の法則を覚えておいてください。
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楽しいことと一緒にできれば、意外にすんなり鍛えることができます。
同じ理屈で、「おやつ中、姿勢を正しくしなければ取り上げる」というのもおすすめです。
良識ある親御さんは、そんなのひどい、と思われるかもしれません。
しかし、私たちもしかして発達グレー研究所では、「本人が勉強に意味を感じられない場合、勉強と直接関係ない姿勢だの持ち方だのまで叱るほうが、よっぽどひどい」と考えています。
☆勉強も脳の飴になるけれど
勉強を「脳にとっての飴」にするためには、「わかった!できた!楽しい!」のサイクルを手動で回す必要があるのですが、
テレビマンガスマホおやつは、自動的に「脳の飴」になるようにできています。
鞭をふるって、初めて「飴と鞭」のバランスが取れます。
勉強が「こちらがさせたいこと」であれば、ソファであろうが、握り鉛筆であろうが、ひとまず譲りましょう。
テレビマンガスマホを導入する時期にもよりますが、幼児期から徹底すれば、かなりの期間、トレーニングができます。
☆パニックになったら?
どんなにパニックを起こしても、要求を通させないことです。
壁や床に頭ガンガンは、自分の子だけ見てると親のメンタル直撃しますが、意味がある気がします。
大きくなったらパニックは怖いよ!
パニック対応は、幼児期よりも、からだが大きくなってからが本当に大変なのだということを肝に銘じましょう。
幼児期に「パニックを起こせば要求が通る」という体験をさせることは、避けましょう。
彼らにとって、ストレス下においては、自分のからだが大きく強くなったことを踏まえた言動をとるのは難しいからです。
頭を壁に打ち付けるのは、脳の角を取って削ることを脳が望んでいるからだと思って良いのでは。
どうしても気になるときは、壁や床にタオルでも添えてあげればよいのです。
※要求を飲まねばならない例外時もありますよね。
当研究所では、誤学習をさせてはならないという意味では今不当な要求を飲むべきではないが、等という形で、本人が納得しやすいエクスキューズ(言い訳)を用意して、例外に対応しています。
自傷行為はリスクです。
しかし、自傷により要求が通ること、闇雲に脳の力を伸ばすことも、大きなリスク、例えば自殺のリスクにつながります。
世の中は、伸ばせ伸ばせと言いますが、
私は、伸ばすだけじゃだめなんだよなぁと思います。
磨かないと。
磨くとは削ること。
削る勇気も必要だと思うことがあるのです。
次回は、勉強中叱らないことによる、もうひとつの、そして一生を左右するデメリット「愛されている=叱られない、という誤学習」についてです。
続きます。
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