【地方公立卒エリートと中学受験2】
過去に誘う五感
人気のない一角でマスクをはずす。
土埃と草木のにおいが流れ込んでくる。
匂いに関連付けられて、記憶が流れ込んでくる。
足についた畳の痕のでこぼこ。
古くなったいぐさの破片の感触。
そうだ、
あのときも、
あのときはクマゼミもいたけど。
あれは、小6の夏の終わりだ。
記憶が次々とpop-upする。
観たいテレビを観るために
実家のテレビは、なかなかつかなかった。
観たい番組のある日は、
早めに、多目に勉強を済ませた。
30分前に
テレビの電源を入れる必要があった。
靴揃え、水やり、風呂洗い、
大した内容ではないが
やらなければ
こっぴどく叱られる仕事があった。
確実にこなした。
庭の犬にえさをやって、
そうそう、済ませた勉強道具を片付けて。
「なんか、お手伝いある?」
「おばあちゃんとこに持ってくもの、ない?」
台所に立つ母の背中に声をかけるのだ。
「ないよ」と言われても、
決して信用しなかった。
テレビが始まってから
あれやったの、じゃあこれやって、と
途中で用事を言いつけられることを、
小6にして学習していたからだ。
大人は気まぐれだ。
こちらがいちいち
つじつまを求めていたら
毎日が失望だ。
精神がもたない。
枝つき枝豆や
おろし金、
すり鉢、
濾し器なんかが台所に出してあったら
「これやってもいい?」と自分から聞いて
見通し立てて、せかせかと動いて、
テレビの始まる時間までに
ノルマを超えて家事をした。
それでも、
テレビをみている途中で呼び出されて
追加の手伝いをさせられることも多かった。
ひっぱたかれることもあった。
でも、親に文句なんてとても言えなかった。
親は、とても理不尽で、とても怖かった。
ぼくは、
小さなときから、
自由と権利と論理を求めて、
いつもがむしゃらだった。
我が子という存在
…うちのもしおと、大違いじゃないか。
いったい、誰に似たんだろう。
妻を疑うつもりは毛頭ないが、
ぼくにも妻にも似ず、とろくて、
どことなくあぶなっかしい。
小学校高学年なのに、
甘ったれだ。
幼児か?というぐらい、
当たり前のことが出来ない。
何から何まで……
いや、何から何まで違うわけではない。
パラレル世界に住むぼくなのか、
と思うぐらい似ているところもある。
何を考えているのかわからない。
それでいて、
一人前の、
理屈や、正論、
哲学的なことを平然と言うこともある。
ぼくと違って、もしおは、
子どもの頃のぼくが言えなかった、
親への文句を
平気で言う。
そのことを、
ぼくはどこか誇らしく思っていた。
理想の育ち
もしおは、同じ年齢だったころのぼくより、
だいぶ……いや、明らかに劣る。
けど、
ぼくよりはるかに、自由だ。
自由な育ちを提供できていることは
ぼくにとって誇らしいことだ。
ほくの仕事が休みの日には、
上野の博物館や日本科学未来館、
あちこちへ連れて行った。
夢中になるもしおの横顔をみながら
このまま、中学受験などせずに、
自由にのびのび育ってほしい。
と心から祈った。
かわいいもしおには、
ぼくがされたような抑圧を絶対にしない。
自由に育ってほしい。
そして
ぼくのように自分で学び、
自立してほしい。
父親として、ずっと願っていた。
そのもしおが。
中学受験塾に行きたいというのだ。
妻は、
私立中受験させようと思う、パパ、いいよね、
と言い放った。
学費のことなら調べてあるよ、大丈夫、
とまで、言った。
僕は目の前が真っ暗になった。
これは僕への裏切りだ。
続きます。妻の裏切り…やり場のない怒り…私立中高一貫?あいつら、ぜんぜん、大したことないじゃないか!こじらせパパ炸裂。
correct-me.hatenablog.com
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