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ピタゴラスイッチ故障中？
ぼくももしおも、例えるなら
よく似たピタゴラ装置なのだが、
もしおのスイッチは入らない。
置かれた場所の傾斜が適切でないのだろう、
ボールの動きが止まってる。
一粒種もしおに
期待し、ヤキモキし、
それでいて
「本人の自由に」ということばを免罪符にし
もしお型ピタゴラスイッチのボールに
勢いを付けてやることも、
微調整してやることもしなかった。
イライラ、もやもやしながら
でも、大切=尊重すべき……という
育児のスタンダードによる洗脳状態のまま
なるべく否定せずに
なるべく苦言を呈さずにいようと
努力したぼくたち夫婦。
叱ることキレることはもちろんあるけれど
基本的に、
自発的にがんばり始めるのを
待っているだけだった。
そして、
なまじぼくらが努力できてしまうから
ただでさえ一人っ子でのんきなもしおを
無風の環境に完全適応させてしまった。
理解ある親のつもりでいたが、
少し視点を変えたら、
殺生な親でもある。
草食遺伝子
人生の傾斜や荒波
強制や圧力や応援。
それらが、なくても伸びる子も、
ないほうが伸びる子も、
そりゃあいるにはいるだろう。
しかし、もしおは、
ぼくそっくりの遺伝子を持っている。
自らを追い込んで走り続けるような
自発的な動機やストイックさは
ぼくらにはたぶん、ない。
ライオンやハイエナに追いかけられて
初めて本気出して走る
インパラとかスプリングボック、
所詮草食モブキャラ程度の努力遺伝子なら、
誰もいない平原で
「自分の力を試したい！」と口走って
全力ダッシュなんて
絶対しないよな。
のんびり、草、喰うよな……。
野菜嫌いだってのに草食にたとえるのは
いかんせんモヤるから
家猫のたとえに戻すが
生まれたときから家猫状態のもしおだって、
ひとたび、
安全センサーを脅かす危機が差し迫れば。
そして、
危険から逃げたい、というエネルギーを
向ける先さえ間違わなければ。
ちょっとは頭のネジが
ピシッとキマって、
ぼくぐらいには
シャキッとしてくれよう。
買ってでもせよ！
だのに、
大切だからと、
栄養豊富なぬるま湯に浸して
長期保温してしまった。
このままだと、
一生、本気を出すことのないまま、
腐るんじゃないか！？
若い時の苦労は買ってでもせよ、という
諺が浮かぶ。
中学受験って、そういうことなのかもな。
東京という特殊な街
東京で生まれ育った大人たちは、
結婚、出産、子育て、
ものすごく重くとらえている。
これまで謎だったが、
東京人が出生率を絞るのは
自然に任せた東京子育ての結果を
見て知っているからではないだろうか。
治安のいい小学校を選んでおきながら、
中学受験という人工的なハードルを購入。
「サピックスオープン」などという
人工的な山だか崖や仮想敵を多数設定。
そしてその攻略のために
さらにオプション課金。
親の課金力を子どもの実力とみなすなんて
馬鹿馬鹿しいと
かつては憤ってさえいたけれど
見方を変えれば、一理ある。
地方から優秀な若者たちがどんどん輸入される東京。
そして、正社員の枠は減っている。
東京のエリート層をニュートン算にたとえたら、
給水も排水も良すぎだ。
猛烈な勢いで入ってくるから
さらに猛烈な勢いで退場させて、
均衡を保っている。
28歳で年収450万とか
47歳で年収700万という
あんしんラインにたどりつくには
熾烈なハードルを突破せねばならぬのだ。
甘やかされて育った子ども一人では
乗り越えられない。
親子なら、超えられるかもしれない。
だから、
親子で挑める最後の受験・中学受験に、
エントリーする……
こういうスタンスの家庭は
少なくないだろう、きっと。
続きます。
【25】
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