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もしおパパ編最終話noudeka.com
もしおママ編最終話noudeka.com
2061年、2月。
季節外れの鋭い日差しが
建物の間から
東京の空気を貫いている
チンダル現象だ。
「もしすけ、おなかすいてるか?」
「ううん」
甲高い返事が刺激となって
光の筋の中に、
小さかった僕の像が結ばれる。
もしおBの回想
2020年、
令和2年の夏、
無神経に身を乗り出した両親から、
中学受験したいかどうか、聞かれた。
ややあって、
「ううん」
僕は答えた。
中学受験に
興味がなかったわけじゃない。
日本科学未来館が好きで
サイエンスコミュニケーターに
名刺をもらい
国立科学博物館が好きで
千葉佐倉の歴史資料館も
とても楽しんでいた僕にとって
小学校の勉強は退屈だった。
どうにもモヤモヤするばかりだった。
日本科学未来館の
サイエンスコミュニケーターさんと
話して初めて
他人と話が合う!と思えた僕にとって
専門分野を持つ先生達に
教えてもらえる環境だと聞けば
私立中高一貫校が
気にならないわけはなかった。
しかし、
どうやら小6の時点で僕は
親の言動機序に気付いてしまっていた。
誘導に乗るわけにはいかなかった。
僕から
「中学受験したい」と言うわけには
行かなかったのだ。
「もしおがしたいと言ったから
ママはこんなに協力してるのに!」
という話になるってことぐらい、
わかってしまった。
両親は、
完全に中学受験をさせるつもりに
なっていたようで、
呆然としていた。
子供の自主性に任せる教育も
子供に言動の責任を取らせる教育も
諸刃の剣だ。
軽率にチャレンジしてほしいなら
ああいう聞き方を、
僕のような
タイプに対してすべきではない。
思考力スイッチをオフにする訓練
中学受験をせず、公立に進学した。
思考力をOFFにして、
上役と女たち、
特に女には、
表面的には絶対服従するか、
腕力を見せつけるかしたほうが、
うまくいくと学んだ。
謙虚さとか、奥ゆかしさがあっては
どこまでも権利侵害されると知り、
そういう機能も意識してオンオフした。
何をしたいのかわからない
公立中学校教師、
実績に貢献できない者のケアをしない
高校教師、
サカリのついた男女。
生身の暴力こそなかったが、
偉きゃ白でも黒になる、
数 is power。
ポリコレ棒による暴力は
無限に許される修羅場で
ポリコレ違反しないよう
毎日が薄氷を踏むような、
いや、
地雷原を匍匐前進で進む日々。
それでも小学校より一見穏やかだ。
適応を拒んだ子は
学校に来なくなるからだ。
蛮族はますます勢力拡大していった。
僕は十分に策士だったから、
さっさと路傍の石に徹した。
内申点争奪ゲームから降りると、
風当たりは弱まった。
違反を見つけて教師にチクると
内申が上がると勘違いした
ヤクザな自警団は
最後まで跋扈していたけれど。
公立中学校にも、
東工大附属高校志望の
ものすごく優秀な奴もいた。
お互い無言で
労い合っていた、そんな気もする。
しかし僕たちは結局最後まで
繋がり方を知らないままだった。
ずっとそれぞれの世界から
息を潜めて外を見ていた。
言葉の通じる誰かが訪ねてきてくれて
繋がって、
一緒に
アイツラを見返す日を夢見て、
対戦ゲームに興じていた、気がする。
初恋
ある日、人気者の女子に優しくされ
恋心らしきものを抱いた。
しかし立場を弁えて、
格下の、その子の友達と
付き合うことに決めた。
勝手に。
当然、フラれた。
お前なんか
大してかわいいわけでもなく、
ただの代用品だったんだぞ、
お高く止まりやがって。
思いがけず、悲しくなんてなかった。
怒りと混乱が僕を突き動かした。
見返したいというふんわりとした夢は、
絶対に見返して
悔しがらせてやらないといけない!
という
得も言われぬ使命感、
いや、ある種の正義感に変わった。
残酷なまでの自己客観視が始まった。
なんだなんだ、
僕は、成績も悪い、立場も低い、
身長も高くはない、
見た目もどうしていいかわからない。
これじゃ見返すどころじゃない。
自分にできるのは、
血で血を洗うゲームを封印して、
勉強することだけだった。
腕力は弱くても、
大した女さえモノにできなくても
学力知力での殴り合いなら
こんなとこの
誰にも負けるもんかと思った。
学びたい、とか向上心とか
そういう美しい気持ちでなく
復讐心に近いものが
僕のガソリンとなった。
トップ高校受験
内申がかなり微妙だったが、
学力でぶん殴れるとこまでいった。
都立二番手ゾーンには
余裕で届く偏差値を持ち、
私立を順調に勝ち進んで
なんだ高校受験余裕じゃんと思った。
私立トップゾーンは別格だった。
英語力不足で弾かれた。
後日なぜか補欠が回ってきたが、
そのときには
完全に気後れしてしまって
深い深い
ためいきつきながら辞退した。
高校入学
ところが4月になると、
「私立トップを蹴ってここへ来た」と
うっかり
言いふらしてしまった。
辞退した席は補欠だが、
合格は合格だ。
嘘ではなかった。
一瞬で、世界が変わった。
最高のハイブランドをまとった
人気者になった。
勉強教えて、と女子の方から
寄ってくるようになった。
この言葉によって
いい思いもしたが、
自分は追い詰められもした。
退路はなかった。
私大でいいなら、
高校受験で
行っておけばよかったのに、
じゃあ私立トップ受かったって
嘘だったんじゃない?
となってしまうからだ。
注目される立場
人気者は辛かった。
「なんでわざわざサピックスや
私立中高一貫校に埋もれにいくんだ」
と思っていたけど、
その意味がやっとわかった。
いつも眠くて、しんどくて、
女達の機嫌や
集団ヒステリーに振り回されて、
ムカついて、
でも誰にもこぼせなくて
ひとりトップを
走り続けねばならない
ヒリヒリした高校生活。
上位でいることは気分がよく
心地良さも確かにあるのだが
どこか長距離走者の孤独に似て
いつも何かに追われていた。
家族旅行は小学校以来行ってない。
大学、就職、そして
甲斐あって、格好のつく大学に
とりあえず進学して、
ようやく、埋もれることができた。
学部はどこでも良かった、
とにかく
大学名を重視せざるを得なかった。
文学部になった。
当時少し景気が戻って
なんだかんだいって、
絶対地雷を踏まないスキルの活かせる
仕事を得た。
負けられないヒリヒリ感と
いつも隣り合わせだった。
ほのぼのとして仕事なめてる奴らが
中高一貫校育ちと知ると、
複雑な気持ちが去来した。
仕事にすがりつかない生き方が
羨ましい…
イヤミっぽく言ったこともある。
機嫌をとれば恋人ができ、
機嫌を取らなくなればフラれ、
ふって、を繰り返し、
遅いタイミングで結婚して
遅いタイミングで子供ができた。
仕事とプライベートがととのうと
ぼくも中学受験をしていたら…
とか
親や過去への恨みつらみは霧消して
これもいい経験だったのだ、
と思えるようになった。
一人息子が、
数字を読み始めるまでは。
駅を出て、もしすけの肩を抱く。
抱くことで、
落ち着かせてもらってることを
感じながら、
深呼吸して思う。
僕の親が
僕に中学受験をさせていたら…?
確かに、
中学受験の走り始めは
ifの世界の僕の命を
もしすけに委ねてレールに誘導した、
かもしれない。
でも今はもう違う。
もしすけは僕じゃない。
埋もれるための中学受験
極上の腐葉土に埋もれる資格が
君にはある。
2061年、2月☓日、☓時。
息子もしすけの中学受験、
第一志望の合格発表はもうすぐだ。
読んでくださり、どうもありがとうございました!
【地方公立卒エリートと中学受験】もしおBの場合 でした!
もしすけの受験番号はあったのか…?
こちらは、開成の合格発表
398名
https://kaiseigakuen.jp/exam2021/
昨年より多いですがまだたぶん回ります、気持ち全部切り替えるのもっと後で。
おばちゃんは、頑張る親子だけじゃなくて、頑張れない親子も、頑張らない親子も、本気で応援しています☺
もうひとりのもしおの物語はこちら!
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これまでのお話もぜひ♥
【地方公立卒エリートと中学受験~もしおパパ編】
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【地方公立卒エリートと中学受験~もしおママ編】親心のダークサイド!
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身も蓋もない記事ばかり書いています、流し読みお願い致します♥
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お帰りついでにポチりで合格祈願!よその子の受験見てもしょうがないかもだけどもおばちゃんの応援にはなる。
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