(2022.5.2リライトしました)
居場所ってなんですか
発達凸凹の子どもについて考える大人は異口同音に「子どもの居場所が大切!」と言います。
この、居場所……って言葉。
子供をしばしば混乱させ、誤解させてしまうようです。
居場所という言葉には、大きく分けて、2つの意味があります。
【物理】
・部屋、教室、公園、机の前の椅子の上、ソファといった、客観的 物理的な実物
【精神】
・心の拠り所という主観的 観念的な意味
発達凸凹などで言葉に敏感になりすぎていると、言葉を解釈するときに、通常よりも多めの労力が必要となります。
物理的な居場所(スペース)も、精神的な居場所(コミュニティ)も、どちらも必要ではありますよね。でも、意味は大きく異なります。
当所での定義
発達支援でも当研究所でも、居場所という言葉をよく使います。
当所の場合、後者、つまり、役割と人間関係、という主観的 観念的 精神的な意味でお話をすることがほとんどです。以下のように定義して考えています。
~居場所とは、端的に言えば、心の拠り所となる「人間関係」。
くどく言うと、
物理的活動と精神的活動を行う、一個人と他者と共有空間が三位一体となった存在のこと。
人間関係と負荷と空間が、重なっている。
人と負荷と空間が、相互に影響を及ぼすことで成り立つ。
人の成長過程や精神状態等に応じて、変化が起こり、適宜移したり、移されたりする。
単なる物理空間を示さない。
~
((クールダウンのための空間は、人間関係がないと言えるため、物理的な居場所に含みます)))
居場所は固定的存在ではない
単なる空間や単なる人間関係を「居場所」ととらえているようならば、誤解をほどいておくべきです。
自分に合う、合わない、が厳然と決まっているかのように思い込ませてしまう原因となりかねません。
当研究所では、
「自己と居場所は、相互に影響を及ぼし合うもの」
と定義しています。
自己にも、居場所にも、互いにいくばくかの可変性、可塑性があるのが原則(例外あり) です。
自分の働きかけによって、役割、人的環境、居場所の居心地って、大きく変わり得るのです。
働きかけても変わらないこともありますが、ダメ元でやってみてほしいのです。その方法お教えしてます。
居場所の設定のコツ
よく、
「学校と家とは別の居場所を!サードプレイスを!」
と言いますよね。
確かに学校は、学力に限らず、本人の生活力、サバイバル力、精神年齢(擦れっぷり)などはるかに超えた環境であって、精神的な居場所として機能してないこともよくあります。
そこで、発達支援では、サードプレイスを!!という話が出てきます。
実はサードプレイスにはサードプレイスの問題もあり万能ではありません。依存、時間、などですね。
ここでは問題点は割愛し、サードプレイスを含む、居場所(コミュニティ、人間関係)の設定のコツをお話しします。
箱庭を行き来せよ
1ローストレスな環境でソーシャルスキルを学び、
2ミドルストレスミドルリターンな環境で実践的練習をし、
3ハイストレスな環境でソーシャルスキルの演習を行う
基本的には、
・なるべく同じ時期に
・継続して
・3つ以上の居場所(コミュニティ)に
属して頂きます。
適宜移り、許容可能な負荷を増やしていきます。
ひとつひとつのコミュニティに依存させすぎないことはとても重要です。
ある他者やある集団に失望しても、別の命綱をつかんだままであれば、立ち直りが見込めて、健全な成長を促すことができます。
しかし、抜け出すモチベーションがなくなるほど安定したコミュニティからは、出られなくなるという弊害もあります。
ステップを行ったり来たりできるように、なるべく同時に設定してください。
居場所=学校や習い事、と思い込むとお金がかかります。
しかし、人と関わること自体が居場所として機能し得ます。お金がなくてもできます。
※1対1などから外に繋ぐ工夫は必要です。ただ甘やかしてくれる存在を設定したくなりますが、無償の愛には気をつけましょう。無償の愛の価値がわからない子にとっては、無償の愛は、重く、危険です。
さて、3つの居場所をより詳しく説明します。
・安全な居場所
短期的にはエネルギーが増える。
成長<回復
維持 安らぎ。ローストレス。のびのび。
居心地がよい、と表現されやすいが、長期間ここばかりに偏って過ごすと、弱っていくことがある。
環境の例:
喧嘩のない平和な状態の家庭・祖父母宅、ほめられやすい習い事、良い思い出のある古巣、完全な目上か完全な目下に囲まれた環境、お掃除ボランティア、比較されない寺子屋や塾。ソーシャルスキル、学習などを優しく1対1で教わるところ。
・高い経験値の得られる居場所
負荷や同調圧力、比較により鍛練する効果がある。段階的に負荷が高まる傾向あり。短期的には精神的エネルギーを大きく消耗する。
負荷を処理していくことで、長期的にはエネルギータンクと最大出力が増大する。
成長>安らぎ。
ハイストレス。
環境の例:
学校、厳しい部活、厳しい習い事、厳しい委員会、厳しい家庭、切磋琢磨する仲間、マウントするきょうだい等。
・ましな居場所
エネルギーが枯渇しない程度に一定の負荷がかかる。ミドルローレベルのストレス。経験値は得られるが高くない。人をゆるやかに成長させるため、時間の経過に伴い充電のための居場所と同じ役割となったり、物足りなくなったりする。状況に合わせ、短期中期での移動を考える必要がある。
環境例:
悩みを抱えた者同士の集まり、フリースクール、話は合わないが大人しく優しい同級生グループ、アルバイト等比較されない少人数
こんなかんじの3つに、分けています。
理想郷はない?
忘れないでください、理想通りの居場所はないと思った方が無難です。
本人も、周囲の人間も、学校も、世間も、時代も、それぞれのペースでそれぞれの方向に随時変わっていきます。
親と子で、理想が異なることもありますし、
要求も、理想も、変わっていくものなのです。
また、削られるだけで何も得られない場所で消耗し続けると、経験の先延ばしが起きて、履修期限をすぎてしまいがちです。こうなると、取り返しのつかない…とまでは申しませんが、いろいろ手間がかかってめんどくさいことになります。
・適度な負荷
・小さな役割
この2つを背負わせてくれるコミュニティを確保させながら、ご家庭で社会通念の裏ルールを学ばせ、適応力を上げさせる…この介入に、心理的 時間的なコストをぶっこみましょう。
大変そうに思われるでしょうか。いいえ、中学受験のコストやニートを養うコストに比べれば、微々たるものです。
うまくいきますと、行き渋りや不登校のお子さんも、居場所(コミュニティ)と共に、育っていきます。
当研究所は、社会通念と、ひた隠しされた裏ルールを研究しています。